紆余曲折を経て長女がこの春、大学を卒業した。
  イタリアで教育を受けさせたわれわれにとっては感慨深いものがあった。

    この国の教育システムは小学が5年、中学が3年、高校が5年で大学は専攻する学部にもよるが
  一般的には3年、大学院が 2年である。

ミラノ大学
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 公立の幼稚園は、働く親のために午後6時まで子どもを
預かってくれる。安全のため、小学卒業までは
両親または近親者の送迎が義務付けられている。

 小学校から筆記と同じ比重を占める口頭試験があり、
考えを説明する力を養う。中学までが義務教育で、欠点
が3教科生ずると進級できない。
高校、大学へは日本でいう入学試験は存在しないが、
卒業資格が必要となる。

 大学に進むためにマトウリタ(成熟の意味)といわれる
厳しい国家試験をパスしなければならない。
数日間筆記試験の後、5時かけて作文を書き、小論文を
   提出て最後は口頭試験である。

    イタリアの高校生はこの試験のために懸命に勉強する。これをパスすることで初めて学への門戸が
   開かれる。

    6月の学年末試験が終わると楽しい3カ月の夏休みに入る。大学の卒業に関しては必要単位取得後、
   日本と同じように卒業論文を提出しなければならない。
 
    こちらでは卒業式の当日に一般公開で論文の発表が行われ、卒業する学生の両親や親戚、友人など
   たくさんの聴衆が詰め掛ける。
   学長を中心に古式ゆかしい衣装に身を包んだ10人の教授たちによって質疑応答が始まる

    教授の質問に戸惑う学生も見受けられたが、総じて堂々と自信を持って発表していた。見解の相違から
   教授同士が舌戦を繰り広げる場面もあった。

    美術史を専攻していた娘は担当の教授の勧めもあって卒論のテーマに「観相学」を選び、東洋と西洋の
   文化の違いを比較考察することになった。英国や日本の図書館に行き資料を集め、論文をまとめ上げた。

    卒論の発表でプラスアルファが加点され、学長から最終的な学生の成績が告げられて、
   晴れて卒業となる。娘の幼きころからの友人から月桂樹の冠が贈られ、シャンパンで乾杯をした。
   厳粛な日本の卒業式とはだいぶ異なるが、アカデミックな雰囲気の中で行われた式だった。

    大学に登録しても半数がドロップアウトするイタリアでは大学の名前より、大学を卒業したか否かが
   重要になる。学生たちはフランクで自己主張が強く、理論好きで、よく学びよく遊ぶ。

   こちらでは高校まで試験が終わるごとに親に点数が通知され、そのつど親の確認のサインが必要です。
   学校の社会科見学で美術館などを訪れる児童のグループをしばしば見ますが、みんなおとなしく解説者の
   話を聞いています。積極的に質問する生徒は皆から尊敬されます。

    中学、高校では3科目60点の合格点に達しないと落第です。
   結構落とされます。日本ではPTAが強いですが、こちらは全体的に先生の権力が強く
   少々の問題点は先生に抗議してもはねつけられます。先生に対しては礼節を持って生徒は接します。
   教育の現場は結構厳しいように思います。こんなところが日本との相違点だと思います。

    ボローニヤには1088年創設の世界最古の大学があります。
   長年の経験から今の教育制度がある訳ですが、深い教育をするという意見がある一方、
   速戦的ではないという意見もあるようです。


ボローニャ大学中庭 ボローニヤ大学廊下 ボローニャ大学教室 ボローニャ大学
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2012.12.2 岩手日報「世界は今」の記事に一部追加して若柳さんの了解を得て掲載しました。